FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算

FIRE

FIRE後に必要なお金は、毎月の生活費だけではない。

たとえば月25万円で生活する場合、年間生活費は300万円である。しかし、FIRE後には住民税や国民健康保険、国民年金などの負担も発生する。会社員の場合給与から天引きになるため、普段あまりこの税金や社会保険負担を意識していない人も多いかと思う。私もその一人である。

そこで本記事では、「50歳・独身・給与収入なし」でFIREし、所得が低くなった後の平常年をモデルとして税金や社会保険負担を考える。

今回のモデルでは、

年間生活費300万円+税金・社会保険約24.5万円=年間約324.5万円

が、月25万円で生活する場合の年間総支出となる。

ただし、24.5万円はFIRE生活者の全国平均ではない。

特に国民健康保険料は全国一律ではなく、前年所得や住んでいる自治体によって異なる。

また、NISAから取り崩すのか、課税口座で利益を確定するのか、副業収入があるのかによっても税負担は変わってくる。

この記事では、50歳・独身でFIREするケースを想定し、生活費20万円・25万円・30万円・35万円では実際に年間いくら必要になるのかをシミュレーションする。

FIREに必要な資産額の基本的な考え方については、「40代でFIREするにはいくら必要?生活費20万・25万・30万・35万円でシミュレーション」で詳しく解説している。

今回はそこから一歩進めて、税金や社会保険まで含めた「本当のFIRE支出」を考えていく。


FIRE後の支出は「生活費」だけではない

FIRE後に必要なお金は、大きく分けると次の4つである。

  • 生活費
  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険
  • 国民年金

会社員の場合、税金や社会保険料の多くは給与から天引きされている。

そのため、「手取り収入から毎月25万円使っている」という人は、自分の生活費を25万円と考えやすい。

しかし、会社を退職すると税金や社会保険料を自分で支払うことになる。

つまり、

生活費+税金+社会保険料=FIRE後の年間支出

として考える必要がある。

生活費だけでFIRE資金を計算すると、実際に必要な金額を少なく見積もってしまう可能性がある。


月20万・25万・30万・35万円の年間生活費

まずは普段の生活費から考えてみよう。

月の生活費年間生活費
20万円240万円
25万円300万円
30万円360万円
35万円420万円

FIRE後は通勤費や仕事関係の支出が減る可能性がある。

その一方で、自由な時間が増えることで旅行や趣味に使うお金が増えることも考えられる。

そのため現在の生活費をそのまま使うのではなく、「FIRE後にどのような生活を送りたいのか」まで考えて予算を決めることが重要である。

特にFIRE後に旅行を楽しみたい場合は、旅行費も含めた年間生活費を考えておきたい。


本記事では税金・社会保険を年間約24.5万円と仮定

ここでは計算を分かりやすくするため、

50歳・独身・給与収入なし

でFIREしたケースを考える。

さらに、NISAや預貯金を中心に取り崩し、ほかに課税所得がほとんどない平常年を想定する。

今回のモデル値は次のとおりである。

項目年間のモデル金額
所得税・住民税0円
国民健康保険約3万円
国民年金約21.5万円
合計約24.5万円

2026年度の国民年金保険料は月額17,920円で、毎月納付した場合は年間215,040円となる。

詳しくは、日本年金機構「国民年金保険料」で確認できる。

一方、国民健康保険料は全国一律ではない。

国民健康保険料は所得に応じて負担する所得割などの「応能分」と、加入者数などに応じて負担する均等割などの「応益分」から構成される。

具体的な算定方法や保険料率は自治体によって異なる。

また、所得が一定基準以下の世帯については、均等割・平等割などの応益分を7割・5割・2割軽減する制度がある。

詳しくは、厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」を確認してほしい。

国保3万円は「全国平均」ではなくモデル値

ここで特に注意したいのが、今回使用する国保約3万円という数字である。

これは、全国平均でも全国一律の保険料でもない。

低所得世帯に対する国保の軽減制度を踏まえながら、FIRE後の必要資産を分かりやすく比較するために設定した便宜的なシミュレーション用モデル値である。

したがって、「50歳でFIREすれば国保は必ず年間3万円になる」という意味ではない。

実際にFIREを検討する段階では、自分が住む自治体の保険料率と前年所得を使って再計算する必要がある。

今回のモデルでは課税所得がほとんどないことを前提として、所得税・住民税を0円としている。

2026年分の所得税では、合計所得金額132万円以下の場合の基礎控除は104万円となっている。

詳しくは、国税庁「No.1199 基礎控除」で確認できる。

以上から、この記事では、

国民年金約21.5万円+国保モデル約3万円=年間約24.5万円

を、FIRE生活が安定した後の基本モデルとして使用する。


税金・社会保険まで含めると年間いくら必要?

それでは、年間生活費に約24.5万円を加えてみよう。

月の生活費年間生活費所得税・住民税国保国民年金年間総支出年間総支出の25倍
20万円240万円0円約3万円約21.5万円約264.5万円約6,613万円
25万円300万円0円約3万円約21.5万円約324.5万円約8,113万円
30万円360万円0円約3万円約21.5万円約384.5万円約9,613万円
35万円420万円0円約3万円約21.5万円約444.5万円約1億1,113万円

※税金・国保は本記事のモデル値であり、実際の金額は前年所得、所得控除、居住自治体、資産の取り崩し方法などによって異なる。

月25万円で生活する場合、生活費だけなら年間300万円である。

しかし今回のモデルでは、

300万円+24.5万円=324.5万円

が年間総支出となる。

4%ルールの考え方で単純に25倍すると、

324.5万円×25=約8,113万円

である。

生活費だけを25倍した場合は、

300万円×25=7,500万円

なので、約613万円の差が生まれる。

年間では24.5万円の負担でも、25年分として考えると600万円以上の差になる。


「年間支出×25」がそのまま50歳の必要資産ではない

ただし、年間総支出を単純に25倍した金額を、そのまま50歳時点の必要資産と考える必要はない。

50歳でFIREする場合、国民年金保険料を支払うのは原則として60歳までである。

さらに65歳以降は、公的年金を受給できるようになる。

そのため、FIRE後の支出構造は大きく3つの期間に分けられる。

年齢主な収支
50~59歳生活費+税金+国保+国民年金
60~64歳生活費+税金+国保など
65歳以降生活費+税金・社会保険-公的年金収入

たとえば50歳時点では国民年金保険料が必要でも、60歳以降は原則としてその支払いがなくなる。

65歳から公的年金を受け取れば、資産から取り崩す金額も少なくなる。

したがって、「年間324.5万円だから約8,113万円必要」と機械的に判断するのではなく、FIREする年齢から90歳程度までのキャッシュフローを考える方が実態に近い。

4%ルールによる25倍の金額は、FIREに必要な資産を考えるための最初の目安として使うのがよいだろう。


FIRE後の税金は「いくら使うか」だけでは決まらない

FIRE後の税金や国民健康保険料を考えるうえで、非常に重要なポイントがある。

それは、

「年間いくら使うか」と「年間いくら所得があるか」は別物

ということである。

たとえば年間420万円を使って生活していても、その420万円をNISAや預貯金から取り崩すのであれば、420万円がそのまま課税所得になるわけではない。

一方、課税口座で利益が出ている資産を売却したり、副業で所得を得たりすれば、税金や国民健康保険料に影響する場合がある。

つまり、同じ月25万円で生活するFIREでも、生活費をどこから出すかによって負担額は変わってくる。


NISA・課税口座・副業では負担がどう変わる?

具体的に3つのケースで比較してみよう。

前提は「50歳・独身・給与収入なし」とする。

ケースFIRE後の資金源税金への影響国保への影響特徴
①課税口座特定口座で年間120万円の売却益約24.4万円が源泉徴収されるケース申告方法などで扱いが変わる利益部分に課税
②NISA中心NISA・預貯金から取り崩すNISAの対象となる利益は非課税他の所得が少なければ負担を抑えやすいFIREとの相性がよい
③副業月5万円副業年間60万円+資産取り崩し所得に応じて負担所得増加で上がる可能性資産取り崩しを減らせる

① 課税口座から取り崩す

源泉徴収ありの特定口座で資産を売却し、年間120万円の売却益が発生したとする。

ここでいう120万円は「売却した金額」ではなく、取得費などを差し引いた利益部分である。

上場株式等の譲渡益には原則として20.315%の税率が適用されるため、

120万円×20.315%=約24.4万円

となる。

特定口座については、国税庁「No.1476 特定口座制度」で確認できる。

なお、源泉徴収ありの特定口座では、その口座内の譲渡所得を申告不要とすることができる。

一方、損益通算や繰越控除などのために確定申告するケースもある。

FIRE後に課税口座を取り崩す場合は、「いくら売ったか」ではなく、いくら利益を確定したのか、そしてどのように申告するのかまで確認することが重要である。

② NISAを中心に取り崩す

NISA口座で取得した対象商品の配当等や売却による譲渡益は、一定の条件のもと非課税となる。

制度の詳細は、国税庁「No.1535 NISA制度」で確認できる。

そのため、NISAから年間300万円や400万円分の資産を売却して生活費に充てても、その売却額そのものが課税所得になるわけではない。

ほかに所得がほとんどなければ、所得税や住民税だけでなく、国保負担を低く抑えられる可能性もある。

FIREにおけるNISAのメリットは、資産形成中に運用益が非課税になることだけではない。

資産を取り崩すFIRE後にも、課税所得を抑えやすい点は大きなメリットである。

③ 副業で月5万円稼ぐ

FIRE後にブログなどの副業で月5万円の所得を得るケースも考えてみよう。

年間では、

5万円×12か月=60万円

である。

FIRE後の収入源はどうする?月5万円の副収入で必要資産はどれだけ減る?と同じモデルを使うと、年間60万円の副業所得がある場合は、

  • 所得税:0円
  • 住民税等:約0.5万円
  • 国保:約6万円
  • 国民年金:約21.5万円

として、税金・社会保険料を年間約28万円と仮定する。

副収入0円のモデルでは約24.5万円なので、副業月5万円による負担増は約3.5万円となる。

しかし、年間60万円の副収入が得られるため、差し引けば資産からの取り崩しを年間約56.5万円減らせる計算になる。

4%ルールの考え方なら、

約56.5万円×25=約1,413万円

である。

つまり今回のモデルでは、月5万円の副収入によってFIREの必要資産を約1,400万円減らせる。

詳しい計算については、「FIRE後の収入源はどうする?月5万円の副収入で必要資産はどれだけ減る?」で詳しく解説している。


FIRE直後と安定後では税金・国保が違う

今回の記事で特に注意したいのが、FIRE直後とFIRE生活が安定した後では負担額が違う可能性があることである。

住民税や国民健康保険料には前年所得が影響する。

たとえば50歳まで会社員として給与を受け取り、その直後にFIREした場合、退職後の収入がほとんどなくても、会社員時代の所得をもとに住民税や国民健康保険料が計算される期間がある。

退職翌年度の住民税の計算例と納付時期、退職時に残る当年度分の準備については、「FIRE後の住民税はいくら?退職翌年の税金に注意」で詳しく解説している。

そのため、FIRE1年目から年間約24.5万円になるとは限らない。

違いを整理すると次のようになる。

FIRE直後FIRE生活安定後
給与収入退職前まであり原則なし
住民税会社員時代の所得が影響FIRE後の所得を反映
国民健康保険前年所得により高くなる可能性所得低下で下がる可能性
国民年金原則必要60歳まで原則必要
本記事の24.5万円モデル当てはまらない可能性が高い目安として使用

つまりFIRE計画では、

「FIRE後の平常年にいくら必要なのか」だけではなく、「退職直後にいくら必要なのか」も別に考える必要がある。

FIRE1年目については退職前年の給与などをもとに住民税・国民健康保険料を試算し、その分の現金を別に確保しておくと安心である。


FIRE直後の暴落にも備えておく

FIRE直後にはもう一つ注意したいリスクがある。

株式市場の暴落である。

会社員であれば給与から生活費を出せるが、FIRE後は資産を取り崩して生活する。

退職直後に株式市場が大きく下落すると、安値で資産を売却して生活費や税金を支払わなければならなくなる可能性がある。

そのため私は、FIREに必要な資産すべてを投資に回すのではなく、退職直後の生活費や税金・社会保険料を支払える現金を確保しておくことが重要だと考えている。

特にFIRE1~2年目は、

生活費+通常より高くなる可能性がある税金・国保

を安全資産で確保しておけば、暴落時に株式を売却するリスクを減らせる。

FIREでは資産額だけではなく、「いつ、どこから生活費を取り崩すのか」まで考えることが重要である。


FIRE後の生活費は「生活費+税・社会保険」で考えよう

FIRE後に必要なお金は、普段の生活費だけではない。

所得税・住民税、国民健康保険、国民年金なども含めて年間支出を計算する必要がある。

今回のモデルでは、「50歳・独身・給与収入なし」で、NISAや預貯金を中心に取り崩し、ほかに課税所得がほとんどないFIRE安定後を想定した。

その場合、税金・社会保険料を年間約24.5万円として計算すると、

  • 月20万円生活 → 年間約264.5万円
  • 月25万円生活 → 年間約324.5万円
  • 月30万円生活 → 年間約384.5万円
  • 月35万円生活 → 年間約444.5万円

となる。

4%ルールで単純に25倍すれば、必要資産の目安は、

  • 月20万円生活 → 約6,600万円
  • 月25万円生活 → 約8,100万円
  • 月30万円生活 → 約9,600万円
  • 月35万円生活 → 約1億1,100万円

となる。

ただし、これはあくまでシミュレーション用のモデルである。

特に国保約3万円は全国平均ではなく、低所得時の軽減制度を踏まえて設定した便宜的なモデル値である。

実際の負担額は、年間いくら使うかだけでは決まらない。

NISAから取り崩すのか、課税口座で利益を確定するのか、副業収入を得るのかによって税金や国民健康保険料は変わってくる。

また、FIRE直後は会社員時代の所得が住民税や国保に反映されるため、FIRE生活が安定した後より負担が大きくなる可能性がある。

そのためFIREを計画するときは、次の順番で考えるのがよい。

  1. FIRE後の生活費を決める
  2. 税金・社会保険料を加える
  3. 資産をどこから取り崩すか考える
  4. FIRE直後の税金・国保を別に計算する
  5. 50~59歳・60~64歳・65歳以降に分けて考える
  6. 副収入を得る場合は、その税・社会保険への影響も計算する
  7. その結果から必要資産を判断する

FIREに必要な資産額の基本的な考え方については、「40代でFIREするにはいくら必要?生活費20万・25万・30万・35万円でシミュレーション」で解説している。

必要資産の目安が分かったら、「40代・資産3,000万円からFIREできる?50歳までの資産推移をシミュレーション」で、現在の資産から50歳までにその金額へ到達できるか確認してみてほしい。

FIREについて最初から順番に知りたい場合は、「FIRE入門ガイド」に戻れば、必要資産の計算から資産形成まで全体の流れを確認できる。

そして、「必要資産が少し高すぎる」と感じた場合は、「FIRE後の収入源はどうする?月5万円の副収入で必要資産はどれだけ減る?」も参考にしてほしい。

今回のモデルでは、月5万円の副収入によって必要資産を約1,400万円減らせる計算になる。

FIRE後の税金・社会保険の負担額をシミュレーションしてみた率直な感想としては、サラリーマン時代ならまだしも、FIRE後だということを考慮すると決して小さな金額ではないと思った。そのため私は現実的な選択肢として、サイドFIREの選択肢を視野に入れつつ日々考えながら行動している。

完全FIREだけでなく、少額の収入を得ながら資産の取り崩しを抑える方法まで含めて考えることで、自分に合ったFIRE計画を作りやすくなる。

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