FIREを目指して必要資産を計算すると、「あと何千万円も必要なのか」と感じることがある。
私も50歳前後のFIREを目指す会社員として、資産形成だけで目標に届くのか、少額の収入を残す方が現実的なのかを考えている。
そこで気になるのが、月5万円の副収入である。
年間では60万円。会社員の給与と比べれば大きくないかもしれないが、資産から取り崩す金額を減らす効果がある。
ただし、「月5万円稼げれば、必要資産を1,500万円減らせる」と考える前に確認したいことがある。その5万円は手取りなのか。そして、何歳まで続くのか。
この記事では、単純な4%ルールでの換算に加え、副収入を得る期間を5年・10年・15年に区切った独自試算を行う。さらに、収入が半減する場合や、FIRE後の自由時間とのバランスまで考えていく。
結論|月5万円の効果は「いくら稼ぐか」と「何年続くか」で決まる
先に結論をまとめる。
| 比較方法・条件 | 月5万円によって減る必要資産の計算額 |
|---|---|
| 年60万円を4%で単純換算 | 1,500万円 |
| 5年間だけ得る・実質年利2% | 約283万円 |
| 10年間だけ得る・実質年利2% | 約539万円 |
| 15年間だけ得る・実質年利2% | 約771万円 |
※月5万円は経費と追加の税・社会保険負担を差し引いた後、生活費に回せる金額。期間別試算は毎年末に年60万円を受け取る前提で、その将来収入をFIRE開始時点の価値に割り引いたもの。4%換算と期間別試算は計算方法が異なるため、同じ条件の運用成績比較ではない。
私が重視したいのは、「1,500万円減らせる」という大きな数字だけではない。仮に10年間しか続かなくても、取り崩しを抑える意味があるという点である。
一方、実績のない収入を最初から満額見込んで退職するのは避けたい。収入がゼロの場合の生活も、別に確認しておく必要がある。
4%ルールでは、月5万円は1,500万円分に相当する
最初に、よく使われる計算を確認する。
必要資産の目安=年間の資産取り崩し額÷4%
月5万円の手取り副収入があれば、年間の取り崩し額は60万円減る。
60万円÷0.04=1,500万円
例えば、税金・社会保険を含む年間総支出が360万円なら、単純計算は次のようになる。
| 月の手取り副収入 | 年間副収入 | 年間取り崩し額 | 4%換算の必要資産 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 0円 | 360万円 | 9,000万円 |
| 3万円 | 36万円 | 324万円 | 8,100万円 |
| 5万円 | 60万円 | 300万円 | 7,500万円 |
| 10万円 | 120万円 | 240万円 | 6,000万円 |
これは規模感をつかむための早見表である。年金、収入の終了時期、運用の値動きを個別に織り込んだ退職判定ではない。4%は確実に得られる利回りでもなく、長期間の資産維持を保証する数字でもない。
必要資産の基本的な考え方は、40代でFIREするにはいくら必要?生活費20万・25万・30万・35万円でシミュレーションで整理している。
独自試算①|月5万円が5年・10年・15年続いた場合
50歳でFIREしたとして、90歳まで同じ副業を続けるとは限らない。
「60歳で仕事をやめたい」「65歳の年金受給までのつなぎにしたい」という考え方もある。そこで、副収入の期間を区切って計算する。
計算の前提
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| FIRE開始 | 50歳 |
| 副収入 | 生活費に回せる手取り年60万円 |
| 副収入を得る期間 | 5年・10年・15年 |
| 実質運用利回り | 年2%で一定 |
| 入金時期 | 各年末 |
| 金額の表示 | FIRE開始時点の購買力に換算 |
実質年利とは、物価上昇の影響を除いた利回りである。ここでは、副収入も物価に合わせて増え、実質的な購買力が一定と仮定する。額面の月5万円が固定される場合、物価上昇下での効果はこの試算より小さくなる。
計算式は次のとおりだ。
必要資産の減少額=各年の手取り副収入÷(1.02)の経過年数乗を、収入がある年について合計
| 収入を得る期間 | 受取総額・実質ベース | 必要資産の減少額 |
|---|---|---|
| 50〜54歳の5年間 | 300万円 | 約283万円 |
| 50〜59歳の10年間 | 600万円 | 約539万円 |
| 50〜64歳の15年間 | 900万円 | 約771万円 |
例えば、15年間で受け取る900万円すべてを、退職時点の必要資産からそのまま引けるわけではない。将来得る収入なので、年2%の運用を前提に現在価値へ換算すると約771万円になる。
この結果は、利回りの置き方でも変わる。15年間の場合、実質年利0%なら900万円、2%なら約771万円である。実質年利を高く置くほど必要資産を減らせる、という単純な関係ではない。将来収入の現在価値は、割引率が高いほど小さくなる。
独自試算②|生活費別に、50歳時点の必要資産を比べる
次に、50歳から90歳到達時点までの40年間を考える。
ここでは副収入の効果を読みやすくするため、次の共通条件で比較する。
- 総支出は月20万・25万・30万・35万円。住居費、旅行費、税・社会保険をすべて含む。
- 総支出は実質額で一定。現役時代の給与にかかる退職直後の税・保険負担も、この予算内に含める前提とする。
- 公的年金は50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーションとFIRE後の年金はいくらもらえる?50歳で退職した場合をシミュレーションと同じく、65歳から年155.5万円(税・保険料控除前)。65歳時点の名目額を155.5万円とし、その後は50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーションのインフレケースと同じ年1.8%増と仮定する。
- 物価上昇率は年2%。年金は各年の物価で割り戻し、50歳時点の購買力に換算する。実質年利2%に対応する名目運用利回りは「(1+実質年利)×(1+物価上昇率)−1=1.02×1.02−1=4.04%」となる。これは本記事の仮定から逆算した値であり、市場の予測値や実績値ではない。
- 副収入ありの場合、50〜64歳の15年間に手取り年60万円を得る。
- 実質年利2%で一定。支出・年金・副収入は年末に精算する。
- 90歳到達時点の残高を0円とする。遺産、予備費、90歳以降の生活費は含めない。
年155.5万円は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせたモデル額であり、手取り額ではない。年1.8%の年金増加率は将来予測ではなく比較用の仮定である。年金受給後の税・保険料も総支出の予算内で賄う前提であり、その実額を年齢別に計算したものではない。
| 月の総支出 | 副収入なし | 月5万円を15年間 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約4,925万円 | 約4,154万円 | 約771万円 |
| 25万円 | 約6,566万円 | 約5,795万円 | 約771万円 |
| 30万円 | 約8,207万円 | 約7,437万円 | 約771万円 |
| 35万円 | 約9,849万円 | 約9,078万円 | 約771万円 |
必要資産は、40年間の支出の現在価値から、65歳以降の年金と期間内の副収入の現在価値を引いて求めた。年齢a歳の名目年金は「155.5万円×1.018の(a−65)乗」、50歳時点の購買力への換算額はその金額を「1.02の(a−50)乗」で割った額とする。表は万円単位で四捨五入している。
同じ月5万円なら、必要資産が減る絶対額はどの支出水準でも同じである。ただし、生活費が少ない人ほど支出に占める副収入の割合は大きい。
月20万円の総支出に対して5万円なら25%、月35万円なら約14%を賄える。
この表の金額は、退職して安全な資産額を示していない。毎年同じ利回りで運用できる条件で、予定した収支が成立する計算額である。暴落、長生き、医療・介護や住宅の臨時支出には別の余裕が必要になる。
また、普段の生活費が月25万円で、税金や保険料を別払いしている人は「月の総支出25万円」の行に当てはめてはいけない。先に年間支出を合算する必要がある。
支出の整理は、FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算を参照してほしい。本記事は副収入の期間差を比べるモデルであり、関連記事の税・保険料を所得別に再計算したものではない。
FIRE後の年金はいくらもらえる?50歳で退職した場合をシミュレーションで、年金の内訳を確認できる。
独自試算③|収入が半減・終了したらどうなるか
副収入を15年間得る予定でも、仕事や事業の状況は変わる。
そこで、月5万円が続く場合に加え、半減や早期終了も試す。
| 副収入のシナリオ | 必要資産の減少額 |
|---|---|
| 月5万円が15年間続く | 約771万円 |
| 月2.5万円が15年間続く | 約385万円 |
| 最初の5年は月5万円、その後10年は月2.5万円 | 約527万円 |
| 月5万円を5年間得て、その後は0円 | 約283万円 |
| 最初から副収入0円 | 0円 |
※いずれも実質年利2%、年末入金。表示は四捨五入。
「月5万円の副収入あり」とひとまとめにしても、資産計画への影響はかなり違う。
特に、ブログのアクセス数や単発案件に左右される収入は、最高月の実績をそのまま将来へ延長しない方がよい。好調な月よりも、低調な年にどこまで生活を支えられるかを確認したい。
私なら、退職判断の前にこの3通りを見る。
- 基本ケース:実際に継続して得られている手取り収入。
- 慎重ケース:その収入が半分になった場合。
- 停止ケース:収入がゼロになった場合。
実績のない収入は、基本ケースでも0円として扱う。そのうえで、収益化できた分を余裕として加える方が計画を立てやすい。
月5万円は「売上」と「生活に使えるお金」を分ける
副業の売上が5万円あっても、生活費へ5万円すべて回せるとは限らない。
この記事では、副収入の効果を次のように定義する。
資産の取り崩しを減らせる金額=副業の売上-必要経費-副業によって増える税・社会保険負担
生活費の総支出には、副収入がなくても発生する税・社会保険を含めておく。そのうえで、副業によって増える負担だけを副収入から差し引く。税・社会保険の全額を両方から引くと二重計上になる。
本記事では、副業による追加負担を個別に再計算する代わりに、その負担と経費を差し引いた後の実質的な収入を月5万円と置く。実際に必要な売上額は、必要経費、所得区分、各種控除、居住自治体、健康保険などによって変わる。
国民健康保険では、前年所得が保険税の計算に関係する。稼いだ年の入金だけで判断せず、翌年度の保険負担も確認しておきたい。
また、「副業が20万円以下なら申告不要」という話を、給与のないFIRE後へそのまま当てはめてはいけない。これは一定の給与所得者などに対する所得税の申告不要制度であり、すべての人に共通する非課税枠ではない。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合がある。
FIRE後の収入源は、時間・場所・資産との関係で選ぶ
収入源を考えるとき、私は金額だけでなく「自由時間をどれだけ使うか」「海外滞在中も続けられるか」「追加資金が必要か」を見たい。
| 収入源 | 活用できる点 | 計画に入れる前に確認すること |
|---|---|---|
| 短時間勤務・業務委託 | 契約条件から収入を見積もりやすい | 勤務場所、拘束時間、契約終了、社会保険の加入条件 |
| 執筆・編集などの受託 | 経験を仕事へつなげられる | 継続顧客、納期、受注がない月 |
| ブログ・デジタルコンテンツ | 記事や商品を蓄積できる | 集客変動、更新時間、売上と経費の実績 |
| 配当・利子 | 保有資産から現金を受け取れる | 元本、減配・価格変動、運用益との二重計上 |
| 不動産賃貸 | 家賃収入を得られる | 空室、修繕、管理、借入返済後の手残り |
この表は稼ぎやすさの順位ではない。自分が続けられる条件で比較するための整理である。
配当を副収入に入れる場合は二重計上に注意する
例えば、保有株式の運用利回りに配当を含めて計算している場合、その配当を別の副収入としてもう一度足すと、収入を過大に見積もる。
この記事の「月5万円」は、資産運用とは別に得る手取り収入として計算している。
追加資金で収益資産を買う場合も、その資金は現金としては使えなくなる。売上や分配金だけを見て必要資産を減らすことはできない。
暴落したときこそ、副収入を過信しない
手取り月5万円があれば、年間の資産売却を60万円抑えられる。総支出が年360万円なら、取り崩しは年300万円になる。
ただし、相場が悪いときも同じ収入が続くとは限らない。景気悪化で受注が減る、広告収入が落ちるなど、運用資産と仕事の両方が影響を受ける可能性がある。
そのため、資産が下落するケースと副収入が途切れるケースを、別々にしか想定しないのは不十分である。
退職前には「資産が下落し、副収入もゼロになったら、現金と支出調整でどのくらい対応できるか」を確認したい。
現金の備えは、FIRE前に現金はいくら必要?生活防衛資金と暴落対策を考える、退職直後の値下がりは、FIRE直後に暴落したらどうなる?50歳FIREをシミュレーションで整理している。
退職前に「収入が少ない月」も経験しておく
FIREして時間ができれば稼げるはずだ、と考える前に、小さく試したい。
例えば、毎月次の記録を残す。
- 売上、必要経費、税・保険の追加負担を考慮した手残り。
- 記事更新や営業、事務処理を含む作業時間。
- 収入が少ない月と、その理由。
- 旅行や体調不良で作業を減らした月の収入。
季節変動を見るには、例えば12か月分を記録する方法がある。ただし、1年の実績があっても、その後の継続が保証されるわけではない。
収入が減ったときに「旅行を短くする」「受託の仕事を増やす」「現金で一時的に補う」など、自分が受け入れられる対応も決めておく。
月5万円の副収入は、FIREに近づく有力な選択肢である。それでも、必要資産から差し引く金額は、売上目標ではなく、手残りの実績と継続期間から決めたい。
私にとっては、50歳前後で仕事を完全に手放すことだけが目的ではない。生活を支えられる資産を作りながら、文章を書くことや旅行を楽しめる時間を増やすことを目指していきたい。
参考資料
※制度の確認時点:2026年10月。試算は筆者の比較用モデルであり、将来の運用成果や収入を予測するものではない。実際の退職判断では、個別の年金見込額、税・社会保険、臨時支出、運用の変動、90歳以降の生活も確認する必要がある。


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