50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーション

50歳FIREに必要な資産と65歳の年金受給までを表す海辺のアイキャッチ FIRE

「50歳で会社を辞めるには、いくら必要なのだろうか」

50歳前後のFIREを目指している私にとって、この問いは資産形成を続けるうえで最も気になるテーマの一つである。

よく知られている目安に「年間生活費の25倍」がある。生活費が月25万円なら年間300万円なので、必要資産は7,500万円だ。

しかし、50歳で退職すれば、公的年金を原則として受け取る65歳までの15年間は、生活費を自分の資産などで賄う必要がある。健康保険料や国民年金保険料も発生し、物価が上がれば生活費も増えるかもしれない。

今回は、私自身の年金加入実績をもとにした年金モデルを使い、50歳時点の資産が6,000万円・7,000万円・8,000万円・9,000万円だった場合を比較する。運用利回りやインフレの条件を変えながら、65歳と90歳で資産がどれだけ残るのかを見ていく。


【結論早見表】50歳FIREにはいくら必要?

「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」と前提を揃え、所得が低くなった平常年の税金・国保を年約3万円、50〜59歳の国民年金保険料を年約21.5万円として再計算した。

50歳資産 運用利回り 生活費インフレ 90歳時点の資産 結果
6,000万円 3% なし 約1,797万円 90歳まで残る
7,000万円 3% なし 約5,059万円 90歳まで残る
8,000万円 3% なし 約8,321万円 90歳まで残る
9,000万円 3% なし 約11,583万円 90歳まで残る
7,000万円 3% 2% 0円 84歳ごろ枯渇
8,000万円 3% 2% 約542万円 90歳まで残る
9,000万円 3% 2% 約3,804万円 90歳まで残る
7,000万円 5% 2% 約8,294万円 90歳まで残る
8,000万円 5% 2% 約15,334万円 90歳まで残る
9,000万円 5% 2% 約22,374万円 90歳まで残る

インフレなし・年利3%では6,000万円でも90歳まで資産が残った。一方、生活費インフレ2%・年利3%では、7,000万円は84歳ごろに枯渇し、8,000万円は90歳時点で約542万円、9,000万円は約3,804万円となった。

必要資産は、支出・年金・運用利回り・インフレを組み合わせて判断する必要がある。

50歳FIREでは65歳までの15年間が重要

50歳で会社を辞めると給与収入がなくなる。公的年金は原則65歳から受給するため、50〜64歳の15年間を資産からの取り崩しなどで乗り切る必要がある。

50〜59歳は生活費・税金・国保・国民年金、60〜64歳は生活費・税金・国保、65歳以降はこれらの支出から公的年金収入を差し引いて考える。50歳時点の資産だけでなく、65歳時点でいくら残せるかが重要である。

50歳FIREのシミュレーション条件

項目 条件
FIRE開始・家族構成 50歳・独身
給与収入・副収入 0円
資金源の前提 NISA・預貯金中心で、年金受給前の課税所得はほとんどない
年間生活費 300万円(月25万円)
所得税・住民税(年金受給前の平常年) 0円のモデル
国保(年金受給前の平常年) 年約3万円のモデル
国民年金保険料 50〜59歳:年約21.5万円
65歳からの公的年金 年155.5万円のモデル
65歳以降の税・保険料 比較のため年3万円を据え置く簡略化モデル
運用利回り 毎年3%・5%で固定
初期資産 6,000万〜9,000万円
期間 50歳開始時点から90歳開始時点までの40年間

国保3万円は全国平均でも実額見積もりでもなく、「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」と共通の低所得時の便宜的なモデル値である。課税口座の売却益にかかる税金や副業所得は織り込んでいない。

退職直後に前年の給与所得をもとに発生する住民税・健康保険料の追加負担は、この平常年モデルには含めていない。退職時には別途予算を確保する必要がある。健康保険の移行期については「FIRE後の健康保険はどうする?国保・任意継続の保険料を3年間比較」も参考にしてほしい。

65歳からの年金155.5万円は、私自身の年金加入実績などをベースにしながら、「ねんきんネット」によって年金見込額を試算した結果に基づいた仮定であり、一般的な50歳退職者の年金額を示すものではない。自分の加入記録に基づく見込額で再計算する必要がある。

また、公的年金受給後の税金、65歳以降の介護保険料、75歳以降の後期高齢者医療保険料を年齢別には計算していない。年3万円の据え置きはこれらの実額を保証するものではなく、老後の負担増で結果が下振れする可能性がある。

翌年資産=当年資産×(1+運用利回り)-年間純支出

50歳欄は開始時点の資産額である。50歳の1年間の収支を反映したものを51歳欄に記載し、89歳の1年間まで計算して90歳欄とする。途中で資産が0円以下になった場合は枯渇とし、それ以降は0円と表示する。計算途中では丸めず、表の表示のみ万円単位で四捨五入する。

まずは4%ルールで必要資産を確認する

生活費が月25万円なら、年間300万円÷4%=7,500万円が単純な目安になる。

ただし、今回のモデルでは50〜59歳に税金・健康保険料・国民年金保険料を加え、年間支出は約324.5万円になる。これを4%で割ると約8,113万円だ。生活費に何を含めるかで目安が変わる。

どちらも年金開始時期や物価、将来の運用成績を個別に反映しない簡易的な目安であり、安全を保証するものではない。

→ 40代でFIREするにはいくら必要?生活費20万・25万・30万・35万円でシミュレーション

50歳から60歳までは国民年金保険料も必要

国民年金保険料は2026年度は月17,920円、12か月で215,040円である。本記事では「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」の概算に合わせて年21.5万円として固定し、将来の保険料改定は反映しない。

生活費300万円+税金・国保3万円+国民年金21.5万円=年間324.5万円

60〜64歳は国民年金保険料を支出から外すため、年間支出は300万円+3万円=303万円となる。詳しい前提は「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」で解説している。

65歳から年金155.5万円を受給すると取り崩し額が減る

インフレなしの基本モデルでは、65歳以降の年間純支出は303万円-155.5万円=147.5万円となる。

期間 年間の資産取り崩し額(インフレなし)
50〜59歳 324.5万円
60〜64歳 303万円
65歳以降 147.5万円

運用を考慮しない場合、65歳までの15年間の純支出は、324.5万円×10年+303万円×5年=4,760万円となる。実際の資産残高は運用成績によって増減する。

【年利3%】6,000万〜9,000万円の資産推移

生活費・年金額を固定したケースである。表の資産額の単位は万円とする。

年齢 6,000万円 7,000万円 8,000万円 9,000万円
50歳 6,000 7,000 8,000 9,000
55歳 5,233 6,392 7,551 8,711
60歳 4,343 5,687 7,031 8,375
65歳 3,427 4,985 6,543 8,101
70歳 3,189 4,995 6,801 8,608
80歳 2,595 5,022 7,450 9,877
90歳 1,797 5,059 8,321 11,583
資産枯渇 90歳までなし 90歳までなし 90歳までなし 90歳までなし

6,000万円の場合、65歳時点で約3,427万円、90歳時点で約1,797万円が残る。7,000万円は65歳約4,985万円、90歳約5,059万円となり、65歳以降はわずかに増加する。

8,000万円は65歳約6,543万円から90歳約8,321万円、9,000万円は65歳約8,101万円から90歳約1億1,583万円となった。いずれも65歳以降は運用益が取り崩し額を上回る。ただし、毎年3%の運用と支出固定を仮定した結果である。

【年利5%】6,000万〜9,000万円の資産推移

年齢 6,000万円 7,000万円 8,000万円 9,000万円
50歳 6,000 7,000 8,000 9,000
55歳 5,865 7,141 8,417 9,693
60歳 5,692 7,321 8,950 10,579
65歳 5,590 7,669 9,748 11,827
70歳 6,320 8,973 11,626 14,279
80歳 8,439 12,761 17,083 21,404
90歳 11,890 18,930 25,970 33,010
資産枯渇 90歳までなし 90歳までなし 90歳までなし 90歳までなし

年利5%・インフレなしでは、すべてのケースで90歳時点の資産が開始時点を上回る。6,000万円でも90歳時点で約1億1,890万円となった。ただし、40年間生活費が300万円のままである点に注意したい。

インフレ2%を考慮すると50歳FIREはいくら必要?

50歳時点で月25万円の生活費が年2%ずつ上昇すると、65歳時点では25万円×1.02の15乗=月約33.6万円になる。

生活費だけが毎年2%上昇する感度分析を行う。公的年金の改定は実際には賃金・物価やマクロ経済スライドなどの影響を受けるため、ここでは65歳時点155.5万円、以後年1.8%増加という既存の仮定を維持する。年1.8%は将来予測ではない。

項目 感度分析の条件
年齢a歳の生活費 300万円×1.02の(a−50)乗
税金・保険料(国民年金を除く) 年3万円固定の簡略化モデル
国民年金保険料 50〜59歳:年21.5万円固定
年齢a歳の年金(65歳以降) 155.5万円×1.018の(a−65)乗

年間純支出は「その年の生活費+3万円+国民年金保険料-年金収入」とする。物価上昇による税・保険料の変化は反映していない。

【インフレ2%・年利3%】7,000万〜9,000万円を比較

年齢 7,000万円 8,000万円 9,000万円
50歳 7,000 8,000 9,000
55歳 6,329 7,488 8,648
60歳 5,379 6,723 8,067
65歳 4,201 5,759 7,317
70歳 3,481 5,287 7,093
80歳 1,180 3,608 6,035
90歳 0 542 3,804
資産枯渇 84歳ごろ 90歳までなし 90歳までなし

7,000万円は80歳時点で約1,180万円まで減り、84歳時点に達するまでの1年間で資産が枯渇する。

8,000万円は65歳約5,759万円、80歳約3,608万円、90歳約542万円となった。90歳まで残るものの、余裕は大きくない。退職直後の追加負担や医療・介護費などを加えれば、資産寿命が短くなる可能性がある。

9,000万円は65歳約7,317万円、80歳約6,035万円、90歳約3,804万円となった。この条件では90歳まで残るが、これだけで安全と断定することはできない。

【インフレ2%・年利5%】なら7,000万円でも90歳まで残る

年齢 7,000万円 8,000万円 9,000万円
50歳 7,000 8,000 9,000
55歳 7,077 8,353 9,629
60歳 6,995 8,624 10,253
65歳 6,812 8,891 10,970
70歳 7,249 9,902 12,556
80歳 7,983 12,305 16,627
90歳 8,294 15,334 22,374
資産枯渇 90歳までなし 90歳までなし 90歳までなし

7,000万円は65歳約6,812万円、80歳約7,983万円、90歳約8,294万円となった。8,000万円は90歳約1億5,334万円、9,000万円は約2億2,374万円である。生活費の上昇率と運用リターンの差が、長期の資産寿命を大きく左右する。

インフレあり・なしで結果はどれだけ変わる?

50歳資産 運用利回り 生活費インフレ 90歳時点の資産 結果
6,000万円 3% なし 約1,797万円 90歳まで残る
7,000万円 3% なし 約5,059万円 90歳まで残る
8,000万円 3% なし 約8,321万円 90歳まで残る
9,000万円 3% なし 約11,583万円 90歳まで残る
7,000万円 3% 2% 0円 84歳ごろ枯渇
8,000万円 3% 2% 約542万円 90歳まで残る
9,000万円 3% 2% 約3,804万円 90歳まで残る
7,000万円 5% 2% 約8,294万円 90歳まで残る
8,000万円 5% 2% 約15,334万円 90歳まで残る
9,000万円 5% 2% 約22,374万円 90歳まで残る

税・社会保険の前提を年約24.5万円に揃えると従来より資産残高は増えるが、インフレや運用利回りによって結果が大きく変わる点は同じである。7,500万円が4%ルールの目安を満たすというだけで、50歳FIREの安全性は判断できない。

私が8,000万円を目標にする理由と、残る不安

私は50歳前後のFIREに向けて、退職金も含めた約8,000万円を一つの目標として考えている。

今回の試算では、8,000万円・年利3%の場合、インフレなしなら90歳時点で約8,321万円が残る。一方、生活費が年2%上昇する場合は約542万円まで減った。

8,000万円はFIREを検討するための目標にはなるものの、達成したら無条件に会社を辞められる金額とは考えていない。実際の退職時には、月25万円で希望する生活を続けられるか、退職直後の住民税や健康保険料を別に準備できるか、暴落時の生活費を確保できるか、年金見込額が変わっていないかを確認したい。

私は国内を拠点にしながら、タイやベトナムなどにも数か月滞在する暮らしに関心がある。日本での生活費に加え、航空券代や滞在費、為替変動も含めて予算を考えたい。資産が想定以上に減った場合は、支出の見直しや副収入も選択肢になる。

→ 50歳でFIREするために40代でやるべきこと|10年前からの準備ロードマップ

FIRE後の取り崩し方法でも結果は変わる

ここまでのシミュレーションでは、必要な生活費を毎年資産から取り崩す方法を使っている。

しかし、実際のFIREでは、

4%ルール

定額取り崩し

定率取り崩し

など複数の方法がある。

定額取り崩しは生活費を安定させやすい一方、暴落時にも同じ金額を取り崩すため、資産寿命を短くする可能性がある。

定率取り崩しは資産が減れば取り崩し額も減るため資産寿命を延ばしやすい一方、生活費が安定しにくい。

FIRE後の取り崩し方法については、関連記事「FIRE後の資産はどう取り崩す?4%ルール・定額・定率を比較」で詳しく比較している。


年利3%・5%が毎年続くわけではない

今回のシミュレーションにはもう一つ重要な注意点がある。

それは、

毎年同じ運用利回りが続くと仮定していること

である。

実際の市場では、

+15%
-25%
+8%
+12%

というようにリターンは毎年変動する。

私は2020年のコロナショック時にもインデックス投資の積立を続けた。しかし、給与収入があり資産を積み立てているときと、給与がなく資産を取り崩すときでは、暴落の受け止め方が変わると思う。

例えば8,000万円が20%下落すると、単純計算で6,400万円となり、さらに生活費を取り崩す必要がある。

40年間の平均リターンが同じでも、FIRE直後に大暴落すると、資産価格が下落した状態で生活費を取り崩すことになる。

その結果、その後に株価が回復しても資産が十分に回復できない場合がある。

これは「シークエンス・オブ・リターン・リスク」と呼ばれる。

FIRE直後に暴落した場合の資産推移については、関連記事「FIRE直後に暴落したらどうなる?50歳FIREをシミュレーション」で詳しく検証している。


サイドFIREなら必要資産を減らせる

今回のシミュレーションでは、50歳以降の給与収入を0円としている。

しかし、FIRE後も月3万円や5万円程度の収入を得られれば、資産から取り崩す金額を減らせる。

たとえば月5万円なら、

5万円×12か月=年間60万円

である。

50~59歳の10年間だけでも単純計算で600万円になる。

さらに、本来取り崩すはずだった資産を運用し続けられるため、長期的な効果は600万円より大きくなる可能性がある。

特にインフレによって生活費が増える場合、少額でも継続的な収入があることは資産寿命を延ばす要因になる。

生活費に使える手取り月5万円が続けば、50〜59歳の年間純支出は324.5万円から264.5万円に減る。年間60万円を4%で割ると単純計算で1,500万円だが、収入が続く期間や税金・社会保険料によって結果は変わるため、必要資産が必ず1,500万円減るわけではない。

関連記事「FIRE後の収入源はどうする?月5万円の副収入で必要資産はどれだけ減る?」では収入が続く期間別の影響も比較している。


自分の年金見込額を確認して50歳FIREを計算する

今回の記事では65歳からの年金を年155.5万円としている。

しかし、実際の年金額は人によって大きく異なる。

厚生年金の加入期間、標準報酬額、国民年金の納付期間などによって受給額が変わるからだ。

そのため、50歳FIREを具体的に考える段階では、自分の年金見込額を確認しておきたい。

日本年金機構の「ねんきんネット」では、今後の加入制度や受給開始年齢などの条件を設定して、将来の老齢年金見込額を試算できる。

平均的な年金額を使うより、自分の年金見込額を使った方がFIRE計画の精度は高くなる。


まとめ|50歳FIREは必要資産を一つの金額で決めない

50歳でFIREする場合、公的年金を受給する65歳まで15年間ある。

そのため、「年間生活費×25倍」だけで必要資産を決めるのではなく、

65歳までにいくら資産を残せるか

が重要である。

今回、65歳から年155.5万円の年金を受け取る条件でシミュレーションしたところ、インフレなし・年利3%では、

6,000万円 → 90歳約1,797万円

7,000万円 → 90歳約5,059万円

8,000万円 → 90歳約8,321万円

9,000万円 → 90歳約1億1,583万円

となった。

しかし、生活費が毎年2%上昇し、年金の伸びを年1.8%と仮定した慎重なケースでは、年利3%で、

7,000万円 → 84歳ごろに枯渇

8,000万円 → 90歳約542万円

9,000万円 → 90歳約3,804万円

となった。

一方、年利5%なら同じインフレ条件でも7,000万円で90歳時点に約8,294万円が残る。

つまり、50歳FIREに必要な資産額は一つの数字だけでは決められない。

確認したいのは、

①50歳時点の資産

②50~64歳の年間支出

③65歳時点の資産残高

④65歳以降の年金額

⑤インフレによる生活費の増加

⑥運用リターン

⑦FIRE直後の暴落に耐えられるか

の7点である。

特に50歳FIREでは、40年以上にわたって資産を取り崩す可能性がある。

そのため、「7,000万円あれば大丈夫」「9,000万円あれば絶対に安全」と考えるのではなく、インフレなし・インフレあり、年利3%・5%、さらに暴落時という複数のシナリオで確認することが重要である。私も定期的に自分の金融資産額や年金見込み額、税・社会保険料を更新して確認を行っている。

50歳FIREで本当に重要なのは、老後の生活費すべてを50歳時点で現金として用意することではない。

50歳から65歳までの15年間を乗り切り、年金受給開始後も十分な運用資産を残せる計画を作ることである。

FIREの必要資産や種類、資産形成からFIRE後の生活まで全体像を確認したい方は、以下の入門ガイドも参考にしてほしい。

→ 40代から始めるFIRE入門ガイド|必要資産・種類・資産形成・FIRE後まで解説

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