FIREを達成した後も、資産運用は終わらない。
むしろ給与収入がなくなり、保有資産から生活費を取り崩すようになってからのほうが、資産配分は重要になる。
FIRE前なら株価が暴落しても、給与から生活費を払いながら積立投資を続けることができる。
しかしFIRE後は違う。
株価が大きく下落しているときにも生活費が必要になれば、値下がりした資産を売却しなければならない可能性があるからだ。
一方、暴落を恐れて現金や債券ばかり保有すると、長期的な資産成長が不足し、インフレに負ける可能性がある。
では、FIRE後は株式・債券・現金をどのくらいの割合で持てばよいのだろうか。
本記事では、
- 株式40%・50%・60%・70%
- FIRE直後に株式が30%暴落したケース
- 各10万回のモンテカルロ・シミュレーション
- 生活費が年2%上昇するケース
- 年金が年1%上昇する中間ケース
- 50〜59歳だけ月5万円の副収入を得るケース
- 8,000万円と9,000万円からFIREするケース
までシミュレーションする。
結論から言えば、FIRE後の資産配分に絶対的な正解はない。
今回のシミュレーションを踏まえると、私なら株式50〜60%程度を検討の出発点としたい。
ただし、それ以上に重要なのが、
「資産配分だけでFIREの安全性を高めようとしないこと」
である。
FIRE開始時の資産額、副収入、生活費、年金、インフレまで組み合わせて考えることで、より現実的なFIRE計画になる。
- 結論早見表|FIRE後の資産配分をどう考える?
- FIRE後の資産配分が重要な理由
- FIRE後も株式が必要な理由
- 債券は暴落時のクッションになる
- 現金は当面の生活費を守る
- FIRE後の株式比率40%・50%・60%・70%を比較
- まずは一定リターンで50〜90歳まで計算
- FIRE直後に株式が30%暴落したら?
- 各10万回のモンテカルロ・シミュレーション
- インフレ2%を考慮すると結果は大きく変わる
- 生活費2%・年金1%上昇の中間ケース
- 50〜59歳だけ月5万円の副収入を得たら?
- 9,000万円まで貯めてからFIREするとどうなる?
- 株式を増やすより1,000万円多く貯めるほうが効果は大きかった
- 9,000万円では株式を増やしても枯渇率は改善しなかった
- 私なら株式50〜60%を検討の出発点にする
- FIRE後はリバランスも重要
- 65歳からの年金も資産配分に影響する
- シミュレーションを見るときの注意点
- まとめ|FIRE後は株式50〜60%を出発点に、資産配分以外の対策も考える
結論早見表|FIRE後の資産配分をどう考える?
最初に、今回のシミュレーションから考えられる資産配分の特徴を整理する。
| 重視すること | 株式 | 債券 | 現金 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 暴落への耐性 | 40% | 50% | 10% | 値動きを抑えやすいが、長期ではインフレが課題 |
| バランス | 50% | 40% | 10% | 暴落耐性と成長力の中間 |
| 長期成長との両立 | 60% | 30% | 10% | 40年以上のFIREとインフレも意識 |
| 成長重視 | 70% | 20% | 10% | 成長力は高いが、暴落時の値動きも大きい |
| 私の検討範囲 | 50〜60% | 30〜40% | 10% | 暴落耐性と長期成長のバランスを重視 |
※これは今回のシミュレーション条件をもとにした整理であり、すべての人に適した資産配分を示すものではない。
FIRE後の資産配分が重要な理由
FIRE前とFIRE後では、投資の目的が少し変わる。
資産形成期は給与収入から生活費を払い、余ったお金を投資できる。
株価が下落しても、基本的には株式を売る必要がない。
しかしFIRE後は、保有資産そのものが生活費の原資になる。
たとえば8,000万円でFIREし、その直後に株式市場が大暴落したとする。
その状態で生活費を確保するために株式を大量に売却すると、その後相場が回復しても、すでに売却した株式は回復の恩恵を受けられない。
これがFIRE後に注意したいシーケンス・オブ・リターン・リスクである。
Morningstarも、退職初期の運用損失がその後の資産寿命に大きく影響する「シーケンス・オブ・リターン・リスク」を取り上げている。
→ Morningstar:運用リターンの順序と退職資産の寿命(英語)
つまりFIRE後は、
「平均リターンが何%になるか」
だけではなく、
「暴落したときに株式を安値で売らずに生活できるか」
まで考える必要がある。
FIRE後も株式が必要な理由
「FIREしたら株式を減らし、安全な債券や現金中心にしたほうがよい」
と考える人もいるだろう。
確かに株式を減らせば、短期的な価格変動は小さくなる。
しかし50歳前後でFIREする場合、その後40年以上にわたって資産を使う可能性がある。
そこで問題になるのがインフレである。
物価が上昇すれば、同じ生活を続けるために必要なお金も増えていく。
現金や低リターンの資産だけでは、資産の実質的な購買力が低下する可能性がある。
そのためFIRE後も一定割合の株式を保有し、長期的な資産成長を狙う必要がある。
債券は暴落時のクッションになる
FIRE後のポートフォリオでは、債券も重要である。
株式ほど高いリターンは期待しにくい一方、一般的には株式より価格変動が小さい。
株式市場が大きく下落した際、生活費の原資として現金や債券を利用できれば、安値で株式を大量に売却する必要性を抑えられる。
つまりFIRE後の債券は、
「株式が回復するまでの時間を確保する資産」
とも考えられる。
ただし債券も元本保証ではない。
金利上昇によって価格が下落することもあり、外国債券であれば為替変動の影響も受ける。
現金は当面の生活費を守る
もう一つ重要なのが現金である。
現金には株式のような大きな値上がりは期待できない。
しかし、市場が暴落していても株式のように大きく値下がりすることはない。
たとえば8,000万円の10%を現金にすれば800万円である。
年間支出が300万円台なら、現金だけでも2年程度の生活費を確保できる。
Morningstarが紹介するバケット戦略でも、近い将来に使う資金を現金、その次に使う資金を質の高い債券、長期的な成長を担う資金を株式などに分ける考え方が紹介されている。
→ Morningstar:退職後の資産を用途別に分けるバケット戦略(英語)
FIRE後は、
現金=短期の生活費
債券=中期的に使う資産
株式=長期的な成長資産
という3層で考えると分かりやすい。
FIRE後の株式比率40%・50%・60%・70%を比較
今回は現金を10%に固定し、株式比率を変えて比較する。
| タイプ | 株式 | 債券 | 現金 |
|---|---|---|---|
| 安定重視 | 40% | 50% | 10% |
| バランス型 | 50% | 40% | 10% |
| 成長重視 | 60% | 30% | 10% |
| 積極型 | 70% | 20% | 10% |
8,000万円なら、実際の金額は次のようになる。
| 株式比率 | 株式 | 債券 | 現金 |
|---|---|---|---|
| 40% | 3,200万円 | 4,000万円 | 800万円 |
| 50% | 4,000万円 | 3,200万円 | 800万円 |
| 60% | 4,800万円 | 2,400万円 | 800万円 |
| 70% | 5,600万円 | 1,600万円 | 800万円 |
では、この違いがFIRE後の資産寿命にどのくらい影響するのだろうか。
まずは一定リターンで50〜90歳まで計算
「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」「50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーション」と共通の平常年モデルに揃え、所得税・住民税0円、国保年約3万円、50〜59歳の国民年金年約21.5万円として計算する。生活費は月25万円、年300万円である。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 開始年齢・初期資産 | 50歳・8,000万円 |
| 資金源 | NISA・預貯金中心、年金受給前の課税所得はほとんどない |
| 株式・債券・現金の年間リターン | 6%・2%・0% |
| 現金比率 | 10%固定 |
| リバランス | 年1回、元の配分へ戻す |
| 50〜59歳の年間純支出(副収入なし) | 324.5万円 |
| 60〜64歳の年間純支出 | 303万円 |
| 65歳からの年金 | 年155.5万円の既存モデルを維持 |
| 65歳以降の年間純支出(インフレなし) | 147.5万円 |
| 計算期間 | 50歳開始時点〜90歳開始時点の40年間 |
国保3万円は全国平均や実額見積もりではなく、「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」と同じ便宜的なモデル値である。国民年金は2026年度の年215,040円を概算の21.5万円に丸めて固定し、将来の保険料改定は反映しない。
退職直後の住民税・健康保険料の追加負担、課税口座の売却益にかかる税金は含めていない。これらは別途予算を確保する必要がある。65歳以降の税・介護保険料、75歳以降の後期高齢者医療保険料は年齢別に計算せず、比較のため年3万円に据え置く簡略化モデルとする。実際の老後の負担が増えれば結果は下振れする。
支出の前提は「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」、退職後の健康保険は「国保・任意継続の保険料を3年間比較」で解説している。
翌年資産=当年資産×(1+年間ポートフォリオリターン)-年間純支出
50歳欄は開始時点とし、50歳の1年間の収支を反映した資産を51歳欄に記載する。89歳の1年間まで計算して90歳欄とする。途中の計算では丸めず、資産額の表示だけ万円単位に四捨五入する。税金や売買手数料なしで毎年同じ配分へ戻す仮定である。
現金10%を固定すると、株式40%・50%・60%・70%の通常リターンは、それぞれ年3.4%・3.8%・4.2%・4.6%となる。
通常ケースの資産推移
| 年齢 | 株式40% | 株式50% | 株式60% | 株式70% |
|---|---|---|---|---|
| 50歳 | 8,000万円 | 8,000万円 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 55歳 | 7,719万円 | 7,889万円 | 8,063万円 | 8,238万円 |
| 60歳 | 7,387万円 | 7,756万円 | 8,139万円 | 8,537万円 |
| 65歳 | 7,109万円 | 7,712万円 | 8,351万円 | 9,029万円 |
| 70歳 | 7,614万円 | 8,497万円 | 9,456万円 | 10,497万円 |
| 80歳 | 8,914万円 | 10,583万円 | 12,481万円 | 14,637万円 |
| 90歳 | 10,731万円 | 13,612万円 | 17,046万円 | 21,128万円 |
毎年一定のリターンが得られる場合、株式比率が高いほど90歳時点の資産は大きくなる。しかし、現実の相場は毎年同じリターンではない。
FIRE直後に株式が30%暴落したら?
50歳の最初の1年間だけ株式▲30%、債券+2%、現金0%とし、翌年から通常リターンへ戻るケースを計算する。支出はインフレなし・副収入なしとする。
| 年齢 | 株式40% | 株式50% | 株式60% | 株式70% |
|---|---|---|---|---|
| 50歳 | 8,000万円 | 8,000万円 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 51歳 | 6,796万円 | 6,540万円 | 6,284万円 | 6,028万円 |
| 55歳 | 6,402万円 | 6,218万円 | 6,025万円 | 5,825万円 |
| 60歳 | 5,830万円 | 5,742万円 | 5,637万円 | 5,515万円 |
| 65歳 | 5,270万円 | 5,284万円 | 5,277万円 | 5,245万円 |
| 70歳 | 5,439万円 | 5,572万円 | 5,680万円 | 5,759万円 |
| 80歳 | 5,876万円 | 6,336万円 | 6,783万円 | 7,208万円 |
| 90歳 | 6,487万円 | 7,445万円 | 8,448万円 | 9,481万円 |
51歳時点では株式40%の約6,796万円に対して株式70%は約6,028万円となり、約768万円の差が生じる。一方、90歳時点では株式70%の資産が最も大きい。「暴落への耐性」と「長期成長」の両方を考える必要がある。
詳しくは「FIRE直後に暴落したらどうなる?50歳FIREをシミュレーション」も参考にしてほしい。
各10万回のモンテカルロ・シミュレーション
株式・債券のリターンを毎年変動させ、各ケース10万回ずつ再計算した。以下のモンテカルロ分析では、初年度も通常の確率分布からリターンを発生させ、株式▲30%を強制する条件は加えていない。
| 項目 | 仮定 |
|---|---|
| 株式の年間リターン | 正規分布、平均6%・標準偏差18% |
| 債券の年間リターン | 正規分布、平均2%・標準偏差6% |
| 株式と債券の同一年の相関 | 0.1 |
| 年ごとのリターン | 独立 |
| 現金リターン | 0% |
| 試行回数 | 各ケース100,000回 |
毎年、株式・債券・現金の比率でリターンを合成し、運用後に純支出を差し引く。残高が0円以下になった試行は枯渇として以後0円とする。6,000万円割れ率は51〜90歳の年次残高が一度でも6,000万円未満になった割合、90歳資産中央値は枯渇した試行の0円も含む中央値である。年の途中の最低残高は測定していない。
インフレを考慮しない結果
| 株式比率 | 90歳までの資産枯渇率 | 6,000万円割れ率 | 90歳資産中央値 |
|---|---|---|---|
| 40% | 4.6% | 59.0% | 約8,490万円 |
| 50% | 6.1% | 57.0% | 約10,011万円 |
| 60% | 7.9% | 56.6% | 約11,462万円 |
| 70% | 9.9% | 57.2% | 約12,748万円 |
株式比率を高めると90歳資産の中央値は増える一方、この支出固定モデルでは枯渇率も上昇する。高い期待リターンだけでFIREの安全性を判断できない。
インフレ2%を考慮すると結果は大きく変わる
次に生活費300万円だけを年2%で増やし、65歳からの年金155.5万円は名目固定する。国民年金保険料や税・保険料のモデル値は固定し、物価上昇に連動させない。この扱いは「50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーション」と共通である。
生活費2%上昇・年金固定
| 株式比率 | 90歳までの資産枯渇率 | 6,000万円割れ率 | 90歳資産中央値 |
|---|---|---|---|
| 40% | 53.6% | 81.0% | 0円 |
| 50% | 47.5% | 74.4% | 約537万円 |
| 60% | 44.0% | 70.2% | 約1,613万円 |
| 70% | 42.0% | 68.1% | 約2,572万円 |
支出固定のケースに比べて枯渇率は大幅に上昇する。今回の条件では株式比率が高いほど枯渇率は低い。40年間のFIREでは短期的な暴落だけでなく、資産の成長が物価上昇に追いつかないリスクも考える必要がある。
生活費2%・年金1%上昇の中間ケース
生活費は年2%、65歳からの年金は155.5万円を起点に年1%増加する感度分析も行う。年金1%は従来の「FIRE後の資産配分はどうする?株式・債券・現金の割合をシミュレーション」の比較条件を維持した仮定であり、実際の改定率を予測するものではない。「50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーション」の年金1.8%上昇ケースとは条件が異なる。
年齢a歳の生活費は300万円×1.02の(a−50)乗、65歳以降の年金は155.5万円×1.01の(a−65)乗とする。税・保険料のモデル値は固定する。
| 株式比率 | 90歳までの資産枯渇率 | 6,000万円割れ率 | 90歳資産中央値 |
|---|---|---|---|
| 40% | 49.9% | 79.7% | 約26万円 |
| 50% | 44.5% | 73.3% | 約1,178万円 |
| 60% | 41.4% | 69.4% | 約2,276万円 |
| 70% | 39.8% | 67.4% | 約3,231万円 |
年金固定より改善するものの、生活費の伸びが年金の伸びを上回るため、資産への負担はなお大きい。
3つの条件で枯渇率を比較
| 株式比率 | インフレなし | 生活費2%・年金固定 | 生活費2%・年金1% |
|---|---|---|---|
| 40% | 4.6% | 53.6% | 49.9% |
| 50% | 6.1% | 47.5% | 44.5% |
| 60% | 7.9% | 44.0% | 41.4% |
| 70% | 9.9% | 42.0% | 39.8% |
50〜59歳だけ月5万円の副収入を得たら?
50〜59歳の10年間だけ年60万円の副収入を得るケースを計算する。副収入がある期間は、「FIRE後の生活費はいくら必要?税金・社会保険まで含めて計算」と同じ所得税0円・住民税等約0.5万円・国保約6万円・国民年金約21.5万円、合計年約28万円のモデルを使う。副収入は売上ではなく、必要経費を差し引いた所得と仮定する。実額の税計算ではない。
50歳の初年度の純支出は、生活費300万円+税・社会保険28万円-副収入60万円=268万円である。副収入なしの324.5万円から56.5万円、約17.4%減る。副収入60万円をそのまま引くのではなく、税・保険料のモデル増加3.5万円も反映した。60歳以降は副収入を0円、税・保険料を年3万円へ戻す。
生活費の年2%上昇、65歳以降の年金年1%上昇は維持する。副収入60万円と税・保険料のモデル値は名目固定する。
| 株式比率 | 副収入なしの枯渇率 | 月5万円×10年の枯渇率 | 6,000万円割れ率 | 90歳資産中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 40% | 49.9% | 40.5% | 73.2% | 約1,641万円 |
| 50% | 44.5% | 36.6% | 67.0% | 約2,950万円 |
| 60% | 41.4% | 34.7% | 63.7% | 約4,190万円 |
| 70% | 39.8% | 34.0% | 62.4% | 約5,269万円 |
株式50%+50代だけ月5万円の副収入では枯渇率36.6%となり、副収入なしの株式70%の39.8%を下回る。投資リスクを増やすだけでなく、FIRE初期の取り崩しを減らすことも有効である。
9,000万円まで貯めてからFIREするとどうなる?
生活費2%上昇・年金1%上昇・50〜59歳だけ月5万円の副収入という条件で、開始資産を9,000万円へ増やす。
| 株式比率 | 90歳までの資産枯渇率 | 6,000万円割れ率 | 90歳資産中央値 |
|---|---|---|---|
| 40% | 24.8% | 57.4% | 約4,972万円 |
| 50% | 23.7% | 52.4% | 約6,631万円 |
| 60% | 23.8% | 50.3% | 約8,200万円 |
| 70% | 24.7% | 50.1% | 約9,645万円 |
8,000万円と9,000万円を比較
| 株式比率 | 8,000万円の枯渇率 | 9,000万円の枯渇率 | 改善幅 |
|---|---|---|---|
| 40% | 40.5% | 24.8% | 15.7ポイント |
| 50% | 36.6% | 23.7% | 12.9ポイント |
| 60% | 34.7% | 23.8% | 10.9ポイント |
| 70% | 34.0% | 24.7% | 9.3ポイント |
FIRE開始資産を増やすことで、すべての配分で枯渇率が下がった。必要資産については「50歳でFIREするにはいくら必要?必要資産と65歳の年金受給までをシミュレーション」でも比較している。
株式を増やすより1,000万円多く貯めるほうが効果は大きかった
副収入ありの8,000万円モデルで株式50%から70%へ増やすと、枯渇率は36.6%から34.0%へ2.6ポイント下がった。一方、株式50%のまま開始資産を9,000万円へ増やすと、36.6%から23.7%へ12.9ポイント下がった。今回の推定値では、開始資産を増やす改善幅が約5倍となる。これはこのモデル内の比較であり、一般的な効果の倍率ではない。
9,000万円では株式を増やしても枯渇率は改善しなかった
9,000万円モデルの枯渇率は株式50%23.7%、60%23.8%、70%24.7%となった。50%と60%の0.1ポイント差は小さく、試行の誤差も考慮すべきである。株式を増やせば必ず枯渇率が下がるわけではない。
一方、90歳資産中央値は株式50%約6,631万円、60%約8,200万円、70%約9,645万円である。枯渇率と、運用が順調な場合に残る資産額は、別々に評価する必要がある。
私なら株式50〜60%を検討の出発点にする
ここまでのシミュレーションを踏まえると、筆者が50歳前後でFIREするなら、
株式50〜60%程度
を検討の出発点にしたい。
たとえば、
株式50%・債券40%・現金10%
あるいは、
株式60%・債券30%・現金10%
である。
株式50%なら暴落時の値動きをある程度抑えながら、長期的な成長も期待できる。
一方、40年以上のFIREとインフレへの対応を重視するなら、株式60%程度も候補になる。
ただし今回の結果から分かるように、
株式比率だけを調整してFIREの安全性を高める方法には限界がある。
私なら株式を70%、80%と増やして期待リターンを高めることだけを考えるより、
- FIRE開始資産を少し増やす
- 50代だけ月5万円程度の副収入を得る
- 暴落時だけ支出を減らす
- 現金を一定額確保する
といった方法を組み合わせたい。
FIRE後はリバランスも重要
資産配分を決めても、株価の上昇や下落によって比率は変化する。
たとえば、
株式50%・債券40%・現金10%
からスタートしても、株価が大きく上昇すれば株式比率が60%近くになる可能性がある。
そこで年1回程度、目標とする資産配分へ戻すリバランスを行う方法がある。
Vanguardも、株式・債券・現金の資産配分は年齢だけでなく、リスク許容度、必要な収入、運用期間などを考慮して決めることが重要としている。また、市場変動によって当初の配分からずれた場合には、リバランスによって目標配分へ戻す考え方を紹介している。
株式が大きく上昇した年には、一部を売却して現金や債券へ移す。
一方、株式が大きく下落した年には、現金や債券から生活費を確保することで、株式を安値で大量に売ることを避けやすくなる。
FIRE後は、
資産配分+取り崩し+リバランス
をセットで考えることが重要である。
取り崩し方法については、以下の記事で詳しく比較している。
→ 「FIRE後の資産はどう取り崩す?4%ルール・定額・定率を比較」
65歳からの年金も資産配分に影響する
50歳FIREの場合、50〜64歳と65歳以降では状況が大きく変わる。
50〜64歳は基本的に資産から生活費を取り崩す必要がある。
しかし65歳から公的年金を受給すれば、資産から取り崩す金額を減らすことができる。
つまり、
50〜64歳:資産からの取り崩しが大きい期間
65歳以降:年金+資産で生活する期間
と分けて考えることができる。
なお、公的年金は65歳時点の金額がその後ずっと固定されるわけではない。
日本年金機構によると、年金額は賃金や物価などをもとに改定され、マクロ経済スライドによる調整も行われる。
→ 日本年金機構「年金額はどのようなルールで改定されるのですか」
そのため本記事の「年金が毎年1%上昇」という条件は将来の年金額を予測したものではなく、インフレの影響を見るための簡略化した感度分析である。
FIRE後の年金については、以下の記事で詳しく試算している。
→ 「FIRE後の年金はいくらもらえる?50歳で退職した場合をシミュレーション」
シミュレーションを見るときの注意点
今回の計算結果は、将来の資産額を予測するものではない。
特にモンテカルロ・シミュレーションは、
- 株式期待リターン6%
- 株式標準偏差18%
- 債券期待リターン2%
- 債券標準偏差6%
- 株式と債券の相関0.1
- 生活費インフレ2%
- 年金上昇率1%
- 年1回リバランス
など、複数の仮定に基づいている。
また、株式・債券のリターンには正規分布を仮定している。
現実の金融市場では暴落や急騰が正規分布より頻繁に発生する可能性もあり、今回のモデルが市場のすべての特徴を再現しているわけではない。
公的年金についても単純に毎年1%増えるわけではない。
実際には賃金や物価などをもとに毎年度改定され、マクロ経済スライドなどによる調整も行われる。
今回の年1%という設定は、長期FIREにおけるインフレの影響を見るための感度分析である。
また「6,000万円割れ率」は、資産枯渇率とは意味が異なる。
一時的に6,000万円を下回った後、相場回復によって資産が増えるケースも含まれる。
したがってシミュレーションでは、一つの数字だけを見るのではなく、
資産枯渇率・途中の資産減少・最終資産
を合わせて見ることが重要である。
まとめ|FIRE後は株式50〜60%を出発点に、資産配分以外の対策も考える
FIRE後の資産配分に絶対的な正解はない。
今回のシミュレーションから分かったことをまとめると、
- 株式比率が低いほどFIRE直後の暴落には強い
- 株式比率が高いほど長期的な成長力は高い
- インフレを考えると株式を減らしすぎるリスクもある
- 50代だけ月5万円の副収入でも資産寿命は改善する
- 8,000万円から9,000万円へFIRE開始資産を増やす効果は大きい
- 9,000万円では株式50〜60%の枯渇率が近く、70%へ増やしても改善しなかった
という結果になった。
私なら50歳前後でFIREする場合、
株式50〜60%・債券30〜40%・現金10%
程度を検討の出発点としたい。
ただし、今回のシミュレーションで最も重要だと感じたのは、資産配分そのものではない。
FIREの安全性は「株式を何%持つか」だけでは決まらない。
FIRE開始時の資産額、生活費、副収入、年金、インフレ、暴落時の支出削減などを組み合わせて考える必要がある。
今回のモデルでは、株式比率を50%から70%へ高めるよりも、FIRE開始資産を8,000万円から9,000万円へ増やすほうが資産枯渇率の改善効果は大きかった。
また、50代だけ月5万円程度の副収入を得ることでも結果は改善した。
したがって私なら、株式比率を高くしてリターンを追求することだけを考えるのではなく、
「暴落しても株式を安値で大量に売らずに生活できる仕組みを作ること」
そして、
「長期的なインフレに負けないだけの成長資産を残すこと」
この2つのバランスを取りながらFIRE後のポートフォリオを設計したい。
FIREの必要資産や種類、資産形成からFIRE後の生活まで全体像を確認したい方は、以下の入門ガイドも参考にしてほしい。


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